イラストレーター座談会
『働くお兄さん!』のキャラクターデザインを担当する小田ハルカさんと、作画を手掛けているイラストレーターの島己(しまこ)さん、まつもとめいこさん、さらにTomoviesから高嶋友也監督にも加わっていただきイラストレーター座談会を開催しました。
――それではまず、『働くお兄さん!』で何を担当されているのか、簡単に教えて下さい。
小田ハルカ(以下、小田):『働くお兄さん!』ではキャラクターデザインと、ほぼ全話で主にタピオとクエ彦、モブの作画をしています。あと背景も何点か書いています。
島己:わたしは主に先輩キャラクターを担当しました。ほかにモブや背景、タピオとクエ彦も少し描いています。
まつもとめいこ(以下、まつもと):わたしはたくさんのモブを担当しました。たとえば5話・ガラスクリーニング回のモブはすべて描いています。あとは背景も少し描いています。
――みなさんキャラクターだけでなく背景も担当されているんですね。
今回AfterEffectでアニメーションを制作しているのですが、スタジオからはどのような指示が来るのでしょうか。
高嶋監督:僕の絵コンテをもとに、制作プロデューサーがパーツ分けと表情差分を指定してイラストレーターさんに絵を発注します。作業的にどうでしたか?
島己:特に問題無く、作業しやすかったですよ!
まつもと:質問するとすぐに回答をいただけるので助かりました。
高嶋監督:よかった! 安心しました(笑)
小田:わたしの場合は指示をいただいて、あきらかな矛盾はその場で質問しますが、結構自由に描かせていただきました(笑)
――とても和やかな雰囲気で良いですね! とはいえ、作業中「ここは気を付けてる」という部分もあるかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
島己:やはりアニメ作品なので、基本的には小田さんのキャラクターデザインに似せるように注意しています。
まつもと:タピオとクエ彦はもちろんですが、モブがとにかく個性豊かかつ可愛いので、それを損なわないよう気を付けました。
島己:わかります! 先輩キャラクターもマツ阪先輩のようながっちりしているデザインから、アンゴラ森先輩のような可愛らしいデザインまで、本当に個性豊かでした。
――ちなみにキャラクターを描くときはどのくらい時間がかかるのでしょうか。
小田:描き慣れているキャラクターだと1キャラ30分くらいが目安ですね。でも、自分の元絵に似せるのが難しくて、頭の中でパーツの位置関係を整理しながら描いています。
一同:30分は早いですね!(ざわめき)
まつもと:5話・ガラスクリーニング回は6、7体ほどモブがいて、1キャラ2時間程度はかかっています。モブは後ろや斜めの設定が無いので、様々な角度から見たときに辻褄が合うよう調整しながら描いているんです。モデルとなっている本物の動物を参考にすることもあります。大変ですが楽しかったです!
島己:わたしの場合、マツ阪先輩は一番長くて4時間くらいかかっています。実はカニ平先輩も3時間くらい。逆に、一番描きやすかったのはスコ山先輩でした。タピオ、クエ彦と同じ猫タイプでバランスが合わせやすかったので。
高嶋監督:僕は絵コンテのタピオを未だちゃんと描けないです。バランスが難しい。
小田:わたしもタピオに関しては、全体の3分の2を作り終えたくらいでようやく描き慣れました。頭の形や目の形、全体的なバランスが絶妙なんです。
――想像以上でした! モブも合わせるとかなりのキャラクター数ですし、表情差分、パーツ分けをしながらの作業は時間がかかりそうですね。
――さきほど「タピオのバランスは絶妙」というお話がありましたが、タピオやクエ彦を描く時のポイントはあるのでしょうか? ぜひ描き方を教えて欲しいです!
小田:全体のバランスは「頭1:体1と4分の1:足1」が目安です。
タピオは「少し重力の影響を受けたまんじゅう」のような輪郭です。耳はスタンダートな形であまり大きくしないように。ヒゲは上向きです。
目はバランスが難しいのですが、極端にいえば「内側に傾いた三角形」がベースです。単純な楕円形ではなく、目尻をツリ目気味にすると似ると思います。
手はリアル猫の丸みを失わないよう、指をまぁるく描いています。バランスが取りづらいのですがまぁるいほうが可愛らしいので。しっぽはそんなに長くないです。
高嶋監督:おお~、タピオが完成しましたね! 次はクエ彦もお願いします!
小田:クエ彦も全体のバランスは一緒です。作画上の表現が難しいのですが、実はタピオより猫背です。
頭の形は「少し横に伸びた逆五角形」をベースにすると崩れにくいです。目は結構ジトっとしているのですが、上まぶたを直線的しすぎないほうがそれっぽくなります。
しっぽはひょろっと長いカギしっぽで、だいたい垂れてますね。
これで完成です!
一同:かわいい~~~!
――小田さん、丁寧な解説ありがとうございました!
ちなみに島己さん、まつもとさんもタピオとクエ彦の作画をされたとのことですが、描きやすいのはどちら……というのはありますか?
小田、島己、まつもと:クエ彦のほうが描きやすいです!
まつもと:円に近いものより、角に近いものの方がバランスが取りやすいんです。
島己:そうですね。シンプルなキャラクターデザインですし、円は歪みが目立ちやすいので、おかしくならないよう気を付けて作画しています。
――それでは最後に、みなさん『働くお兄さん!』ではたくさんのキャラクターを描かれていますが、特にお気に入りキャラクターやシーンはありますか?
島己:自分の担当キャラクターではスコ山先輩が一番好きです! 何とも言えない不思議な雰囲気だけど、優しくてしっかりしたところとか。TVで見たときの「ハァァァ~」という声も、ギャップがあって良かったです!
まつもと:わたしはペッ子がお気に入りですね。作画は担当していないのですが、TVで見たとき、とにかく声も動きも可愛くって!
監督:井上ほの花さんの演技がとても可愛らしかったですね!
島己:あとは5話・ガラスクリーニング回の名前を呼んではいけないその動物も良かったです。トロピカル感があって面白かったし、手をたたく効果音も特徴的でした。ハタを織っているツルも良かった! あんなガラスクリーニングがあったら楽しそうですね。
まつもと:自分が担当した中で気に入っているのは同じく5話のツルです。実はハタ織機も描きました! あと、モブはあまり表情のあるキャラクターがいないのですが、これからの話で出てくるサルのキャラクターが表情豊かで、作業していて楽しかったです。
小田:放送済みの話だと6話・交通量調査回の川のシーンがお気に入りです。「サメー」「サメー」と賑やかで楽しいシーンですね。
キャラクターは先輩だとジャコネ川先輩とアルパ院先輩がお気に入りです。ジャコネ川先輩はヌラっとしていつの間にかいる感じが好きで。アルパ院先輩は頼れる先輩感が良いです。あのアパレルショップは働きやすいと思います!
監督:先輩のキャラクターデザインで1番最初に書いたのがジャコネ川先輩だったよね。
小田:そうですね。初期だったのでデザインもかなり苦戦しました。
高嶋監督:キャラクターデザインは、初期案から現在までかなり紆余曲折あったので、機会があればぜひどこかでお見せしたいです!
ちなみに僕は、これから放送の焼き肉屋さんの回がお気に入りです。いつもより少し多めに動かしているのでどうぞお楽しみに!
――うまい具合に監督が締めてくださいましたね(笑)
小田さん、島己さん、まつもとさん、高嶋監督、本日はありがとうございました!